ずっと牡蠣を買ってみたいと思っていた。けれども、それ以外の食材が優先され、いつも買う機会を逃していた。「よし!牡蠣を買おう!」という強い気持ちになれないまま、私は三十六歳になっていた。
ちなみに牡蠣にいい思い出はない。実家で出てきたカキフライは美味しくなかったし、油にやられたのだと思うが、いつも食後の気分は悪かった記憶がある。これは毎年「当たる」ニュースを見るたび、あの時はもしや当たっていたのでは…と思うほどだ。
結婚指輪を作りに行った際にランチを食べた飲食店で牡蠣を売りにしていたのだが、なぜか私はスパゲッティミートソースを注文し、コンソメ然とした味に愕然とした。それを契機に外でパスタを頼むことが無くなり、自身の追い求める味を求め内製化に走った話はまた別の話である。牡蠣はまったく関係ないが、牡蠣を思い出すとあの店の味を思い出してムカムカしてしまうのだ。
牡蠣カレー
というわけで、牡蠣にはいい思い出はないものの、食材としてはずっと気になっていた。それは「自分で調理したら美味しくなるのではないか?」という自惚れに起因する。
そして先日、漸く行動に出ることができた。スーパーで特売になっていたのを見て「これは運命に違いない!」と牡蠣を買い求めに行ったのだ。初めて買う牡蠣に心が躍った。
それを早速カレーを作ったのだが、これがとても美味しかった。初めてにしては我ながら上出来だったと思う。あの飲食店の思い出がこのカレーで上書きされることを願うばかりだ。
油分が少ない分、ピリッとした辛さが際立つカレーになった。また作ってみたいと思っている。
気を付けたこと
牡蠣はそのほとんどが水分を占めていると思われたため、長時間煮込むと小さくなってしまうのではないかと思った。ゆえに、鶏や牛と違って最初から煮込むことはしなかった。
まず、野菜のみのベースを作り、美味しい野菜スープを作った。材料は以前書いたチキンスープカレーのレシピから、肉と水の分量を変えた(400ml→200ml)ものと等しい。
野菜スープが十分に煮込まれた頃合いで、フライパンにオリーブオイルをひいて多めの刻み生姜を香りが出るまで弱火で熱したのち、しっかり洗っておいた牡蠣(250g)を投入した。初めて調理したのでちょっと臭みなどが心配だったので、お酒を大匙1加えて蓋を閉め、酒蒸しのようにした。
火が通ったころ合いで醤油を少し加えて味見をしてみたところ、見事な牡蠣の酒蒸しめいたものができていた。息子に味見をさせたところ「とっても美味しい」とのことでテンションが上がっていたのでとても安心したことを覚えている。
牡蠣から出てきていた出汁についても全く臭みがなく、上品な旨味があったため、牡蠣を出汁も含めて野菜スープに投入し、少し加熱して息子用にとりわけ、その後カレー粉を入れて軽く煮込んで仕上げた。
おわりに
カレーにせずに酒蒸しのままでもいけそうであるし、パスタにしても美味しそうだった。ということでまた安くなっていたら買おうと思う。
何より、息子がとても気に入ってくれたのも嬉しかった。ちょっとクセのある味だったので、もしかしたら食べてくれないかもしれないと心配していたのだ。彼には嫌いなものはないのだろうか(味の序列はあるようなのだが)。
帆立と鶏肉を合わせても美味しそうだなと思いつつ、そんな贅沢なカレーが作る日が来るのだろうか?ここに書いてしまった以上、いつか作るのだろう。